盆が早よ来りゃ 早よ戻る
あの山あの川 故郷の空が
濡れた瞼に また揺れる
せめて一ト枝(えだ) つんつん椿
子守哀しや 髪かざり
夕焼け小焼けに 泣く子を背負(しょ)った
幼馴染みの うしろ影
アカシヤの 花の下で
あの娘が窃っと 瞼を拭いた
赤いハンカチよ
怨みに濡れた 目がしらに
それでも泪は こぼれて落ちた
北国の 春も逝く日
俺たちだけが しょんぼり見てた
遠い浮雲よ
死ぬ気になれば ふたりとも
霞の彼方に 行かれたものを
アカシヤの 花も散って
あの娘はどこか 俤匂う
赤いハンカチよ
背広の胸に この俺の
こころに遺るよ 切ない影が
「さよなら」も言わず出てゆく彼を
君はベッドの中でぼんやり見てただけ
誰か他の男を もう一度
初めから愛せるかい 今も…